もう亡くなって13年になりますが、私の母の父、つまり私の母方の祖父は私にとってかけがえのない人でした。明治生まれの肥後もっこすそのままの熊本弁丸出しの祖父と私との間には、誰にも入ることの出来ない深い深い関係がありました。
それはさておき、私のおじいちゃんの面白い思い出話。
その1
今から30年くらい前の本郷時代の多分中学生くらいの頃の話。ある日おじいちゃんの家に行くと、おじいちゃんが私に「どうかい、眞ちゃん、イメージダウンを図ってみた!」と言いました。テレビの場所をずらして模様替えをした様子。「おじいちゃん、それを言うならイメージチェンジだろ!」
その2
私が小学生のころ、叔父に縁のある長瀞でライン下りを楽しんだおじいちゃん。船頭さんの巧みな舟捌きを堪能したようです。ライン下りをした時のおじいちゃんは急流にさしかかると恐怖で硬直して足を突っ張っていたと同行の親類から聞きました。一応私とおじいちゃんとのルール(正確に言えば家で何もしゃべらないおじいちゃんを話させるため〜私の質問には面倒がらずに笑顔で答えるから私はおじいちゃんが死ぬまで毎日会うたびに質問攻撃を続けました)で長瀞の話を一部始終質問しました。すると、意外にも全然恐くなかったと…。「長瀞のライン下りなんか、あ〜ん(九州人独特の馬鹿にした時の言い方)、つまらんばい。俺は熊本の球磨川の急流で育ったからあんなゆっくりした流れはスルリが無い!」勝ち誇ったような顔。「おじいちゃん、それを言うならスリルだろ!!」
その3
私のおじいちゃんは熱烈な巨人ファン。ナイターは1シーズン全試合をテレビ観戦します。しかし巨人が負けている試合は頭に来て演歌の番組や時代劇に切り替えてしまうので、一番の醍醐味の逆転勝ちを見た試しがありません。正確に言うと、私や叔父たちと見ている時には私たちはチャンネルを回さないから巨人の逆転勝ちを見ることが出来ます。そんなおじいちゃんは私が大学生か新入社員の頃だろうか、巨人で活躍した「巨人史上最高の外国人」クロマティーの大ファン。クロマティーが打って巨人が勝って私が帰宅すると、必ず「くろまちーはよかね〜!!」と喜びを私と分かち合おうとします。ちなみにダブルプレーや内野フライが多かった原や中畑には辛口でした。「あれはつまらんばい」
おじいちゃんはどうしてもクロマティーと言えずにくろまちー(敢えてひらがな)としか言えません。ちなみに大正生まれの私の父は、ティーが発音できず、テーになります。テーショット。レモンテー。ミルクテー。アイステー。くろまてー。おじいちゃんのくろまちー、父のくろまてー。たまに目撃しましたが、両者ともくろまちー、くろまてーで会話は成立していました。でもお互い相手の発音が違うと思っていたようです。
その4
今から20年以上前の頃の話。私が酒を飲んで4時とか5時に帰宅する時がありました。野球が終わると寝てしまうおじいちゃんは宵っ張りのおばあちゃんの迷惑を顧みず3時から5時に起きてもぞもぞとよぼよぼと動き出します。そういうことで私が超深夜の4時5時に帰るとおじいちゃんが顔を洗っている時歯を磨いている時があります。おじいちゃんの物音がする洗面所に降りて「ただいま」と言いつつお尻に浣腸(七年殺しが昔はやりました)をすると、きゅっとお尻をそぼめて、全身で振り返ります(よぼよぼしていたので首だけでは振り向けない)。満面の笑顔なのですが、口から唾液と歯磨き粉のミックス液をたらしながら「眞ちゃん、おはよう!今日は早かね〜!」と言います。「違うって、今帰ってきてこれから寝るんだよ!!」。そして2人は並んで歯磨き。でも寝起きと深夜帰宅が同時になって歯を磨いたことが何度あったか。これがけっこう何度もあったんです。
その5
今は無き軽井沢の山荘におじいちゃんと行くと必ず草刈りをしようと釜を片手に遊びましたが。麗句ニュータウン内に山荘があったので、レマン湖湖畔の三越の喫茶店でおじいちゃんに宇治金時(かき氷)をよく食べさせてもらいました。外で食べるかき氷は本当に美味しかった。
ある日、まだ小さかった妹(ということは私も結構小さい)、おじいちゃんが妹と手をつないで山荘の近所を散歩していました。近所に○○さんという人の山荘があって、そこに彼らはレトリバーを連れて来ていました。その犬が突然(あくまでおじいちゃん曰く突然)茂みから飛び出してきて、どう考えても懐こうとおもっておじいちゃんに飛びついて後ろ足で立っておじいちゃんの胸に前足をやりました。足が弱いおじいちゃんは一瞬たじろいだものの昔警察官だった頃鍛えた柔道の心得で瞬間的に身をかわす(無理無理)と同時に妹を自分の後ろにかばい、手に杖を持っていたので昔警察官だった頃の剣道を思い出して?杖で犬を撃退(無理無理)したところ、とにもかくにも大きな犬は○○さんの家に逃げ込みました。(あくまで犬を撃退したというのはおじいちゃん曰くです。私はそうとうびびったおじいちゃんが何とか杖を使って追い払ったと思っていますが)
犬が逃げたので強気になって、ついには激高したおじいちゃん。○○さんの家の前に歩み寄ると(歩くスピードは亀より遅い)、一喝!
「ぬしゃあなんば考えとるかっ!犬は鎖につないどくもんゾーー!」(お前は何を考えているのか!犬は鎖につないでおくもんだぞ)と声の限りにどなりました。「つないどくもんぞー」の部分は、後ろに進む事に声を大きく大げさに言って「もんぞ」の「ぞ」の時にクライマックスを迎えてボリュームマックスにしつつ語尾も伸ばす)そうすると○○さんの奥さんが飛び出してきて謝って、「この犬はおとなしい犬ですから…」と一生懸命鎖につながずにいたことでおじいちゃんに結果として飛びかかってしまった(犬は愛嬌振りまいてなついたつもり)ことを詫びました。が、肥後もっこすのおじいちゃんは謝られても引っ込みも付かず、「犬は鎖につないどくもんぞ、わかったか!」と一喝したそうです。
その日以来、私の家族の間では、その犬のことを「もんぞ犬(いぬでもけんでも良い)」と呼ばれるようになりました。翌年、翌々年、そして次の時も、、軽井沢の山荘を訪れると、ちょうどうちの山荘に行く途中に○○さんの家があったのでどうしてもそっちをみて「今年はもんぞ犬は来てるね(来てないね)」とみんなが自然に話すのでした。
まあ、おじいちゃんの話は機会があればまた。防犯カメラ、ハイエナ、どぎゃんあろかい、嘘つきは○○のもと。珈琲ダック、、、、。
一部誇張がありますが、まあ気にしない気にしない。
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